世界堂「油絵 画用液 大全」|おすすめの溶き油を用途別にご紹介!
油絵の画用液は種類が多いですし、ひとつひとつ買って試すのもたいへんです。ですが、それぞれの画用液の用途や特徴を知れば、自分の表現に必要な画用液がどれなのかだんだんみえてきます。
それでは、どんなオイルがあるのかをみていきましょう!
目次
1 画用液の種類
2 絵具の練調子を整えるもの
2-1 調合溶き油
2-2 揮発性油
2-3 乾性油
3 絵具の乾燥を促進するもの
3-1 液状乾燥促進剤
3-2 絵具状乾燥促進剤
4 絵具のつやを調整するもの
4-1 描画用ワニス
4-2 画面修正用ワニス
5 完成後に画面を保護するもの
5-1 完全乾燥後用の画面保護ワニス
5-2 指触乾燥後用の画面保護ワニス
6 その他の画用液
6-1 絵具剥離剤
6-2 金箔接着剤
まとめ
1 画用液の種類
まずは画用液の種類からみていきましょう。たくさん種類のある画用液ですが、おおまかなジャンルにわけると、あんがい単純に分類できます。画用液は大きくわけて絵具の練り調子を整えるもの、絵具の乾燥を促進するもの、絵具のつやを調整するもの、完成後に画面を保護するもの、その他の画用液に分類できます。そしてこれらの中にはさらに種類があり、どのようなオイルを使用するかによってさまざまな絵肌を表現でき、絵具が乾燥するスピードもコントロールすることができます。
では、まずは「絵具の練り調子を整えるもの」からみていきましょう。
2 絵具の練調子を整えるもの
油絵具の基本的なしくみは、「顔料」という色の粉を「糊」でキャンバスに定着させるというものです。この糊にあたるのが乾性油(かんせいゆ)です。そして、絵具をうすめるためのものが揮発性油(きはつせいゆ)です。水彩絵具やアクリル絵具は、絵具の練り調子(粘度)を調節する際に水を使用しますが、油絵具の場合は絵具と同じく油を使います。油絵では、この「乾性油」と「揮発性油」を調合して絵具を溶きます。そして必要に応じてあとでご紹介する、「乾燥を促進させるもの」や「つやを調整するもの」なども調合していきます。
「ややこしい…」と思われた方もいらっしゃるかもしれませんが、ご安心ください。あらかじめ調合してあるものもあります。それが初心者の方におすすめの調合溶き油です!
2-1 調合溶き油
まずは万能で便利な調合溶き油。一般的には、「ペインティング オイル」と呼ばれます。あらかじめ適度な分量配分で調合されているので、そのまますぐに使えます。「これがあればとりあえず大丈夫」とよく言われる初心者の方にはおすすめの溶き油です。乾性油と揮発性油にくわえ、つやを出すワニスと乾燥促進剤が理想的な比率で調合されています。かんたんにいうと、ペインティングオイル1本があると、「絵具の練り調子を調節でき、つやを出しつつ絵具を定着させ、なおかつ乾燥も促進させれる」ということです。なかにはホルベインの「スペシャル マット ペンチング オイル」のように”つや消し”のものもあります。
また、調合溶き油にはルソルバンというものもあります。一般的なペインティングオイルにはアマニ油が使用されますが、ルソルバンには精製ケシ油が使用されており、黄変しにくいのが特徴。しかし、乾燥速度と画面の丈夫さでは、ペインティングオイルより少し劣ります。
ペインティングオイル
ルソルバン
2-2 揮発性油
揮発性油は油絵具の"うすめ液"です。水彩画やアクリル画を描くときの水のような役割をはたします。揮発性なので、時間とともに空気中に揮散し、画面には残りません。制作のはじめの手順で、画面全体にうすく色をのせる"おつゆ描き"と呼ばれる描き方の時に多く使用され、そのあとのプロセスでも使用されます。画用液を調合する際は、濃度調節に使われます。
揮発性油には代表的なもので、ターペンタイン(テレピン)とぺトロールがあります。
ターペンタイン(テレピン)は松ヤニから精製された揮発性油で、溶解力に優れていますが、長期間空気にさらすと変質するので、保存には注意が必要です。
ぺトロールは石油系の揮発性油で、ターペンタイン(テレピン)に比べて、乾燥がややおだやかです。溶解力が少し弱いので、一部のワニス(つやを出す画用液)を白濁させる場合があるので、注意が必要です。ターペンタイン(テレピン)とぺトロールは似ていますが、乾くスピードや組み合わせる画用液によって、どちらを選ぶかを決めます。
また、ラベンダーから得られるスパイク ラベンダー オイルもあります。スパイク ラベンダー オイルはターペンタイン(テレピン)よりも溶解力に優れています。また、揮発は遅く、界面活性剤のような効果(油のなじみがよくなる)があり、画面のはじきを抑え、防腐効果もあります。そしてラベンダーの香りがします!
ターペンタイン(テレピン)
ぺトロール
スパイク ラベンダー オイル
2-3 乾性油
絵具を画面に定着させる"糊"の役割をはたす乾性油。乾性油は空気中の酸素と反応することによって、非常にゆっくりと硬化します。乾性油を絵具にくわえることで、固着力とつや、透明度を上げ、作品を丈夫なものにします。
乾性油には、代表的なものでリンシードオイル、ポピーオイル、サフラワーオイルがあります。
リンシードオイルは、アマの種子から搾油し、精製したもの。黄変(油焼け)するので、それを嫌う人もいますが、硬化すると非常にに強固で頑丈な画面を作るので理想的な乾性油といわれています。
ポピーオイルは、ケシの種子より搾油し、精製したもの。乾燥速度はリンシードより遅く、塗膜もリンシードほど強固ではないですが、黄変しにくいのが特徴。そのためホワイトなどの淡い色に使用する人が多いです。
さいごに、サフラワーオイルは、ベニバナの種子から搾油し、精製したものです。乾燥速度はリンシードより遅く、ポピーと同じくらいです。塗膜もリンシードほど強固ではないですが、黄変しにくいのが特徴。ポピーと性質は似ていますが、ポピーより少し安価です。しかし、あまり取り扱っているメーカーはありません。
リンシードオイル
ポピーオイル
サフラワーオイル
3 絵具の乾燥を促進するもの
油絵具の乾く速度は非常にゆっくりです。季節や使用するオイルによっては「何日たっても乾かない…」なんてことも!乾いていない絵具の上に新しい絵具をのせて、下の絵具がはがれてしまった…といったこともよくあります。絵具を早く乾かすためには、シッカチーフという液状の乾燥促進剤や、メディウムという絵具状の乾燥促進剤を使用します。両方とも、画用液にまぜたり絵具に直接練りこんだりして使用します。
3-1 液状乾燥促進剤
シッカチーフには、淡色のものと褐色のものがあります。淡色のものはおだやかに、褐色のものは強力に乾燥を促進します。褐色のものはけっこう茶色いですが、乾燥とともに色は淡くなります。分量は、絵具に直接まぜるときは10%くらいまで、乾性油にまぜるときは30%くらいまでにとどめます。
淡色シッカチーフ
褐色シッカチーフ
3-2 絵具状乾燥促進剤
メディウムはシッカチーフに比べて、より速く乾き、メーカーによってさまざまな種類のものが造られています。乾燥速度、透明性、光沢、粘度といった特徴によって、適切なものを選びます。メディウムは褐色のものが多いので、淡い色に使用する場合は、透明性が高いものがおすすめです。メディウムは、制作の制限時間が限られている美大受験の実技試験では必需品となっています!
メディウム
4 絵具のつやを調整するもの
油絵の王道の描き方では、画面につや(光沢)を与えることによって、色調に深みを与え作品を美しく仕上げます。そのために使われるのが、絵具とまぜて使用する描画用ワニスと、絵具とはまぜずに使用する画面修正用ワニスです。
ですが、必ずしも画面につやがないといけないわけではありません。もちろん現代ではさまざまな表現方法があり、逆に画面をマット(つや消し)に仕上げたい方もいます。その場合は、調合溶き油のセクションでご紹介したホルベインの「スペシャル マット ペンチング オイル」を使用したり、完成後に画面を保護するために塗る"仕上げ用のワニス"に、マットなものを選びましょう。
4-1 描画用ワニス
描画用ワニスとは、乾性油と揮発性油と調合して、絵具を溶くために使用するワニスです。描画用ワニスには代表的なもので、ダンマルワニス・マスチックワニス・パンドルがあります。
ダンマルワニスは、天然のダンマル樹脂をターペンタイン(テレピン)で溶解させたもので、古来より使われてきました。乾性油と揮発性油を適宜まぜて、描画用ワニスとして使用できます。
マスチックワニスは、非常に貴重なマスチック樹脂をターペンタイン(テレピン)で溶解したもので、絵具の伸びを良くするので、細密描画に適しています。ダンマルワニスと同じく、乾性油と揮発性油を適宜まぜて、描画用ワニスとして使用できます。
そしてパンドルは、ダンマルワニスと同様にダンマル樹脂を揮発性油で溶いたものですが、メーカーによって使われている揮発性油がターペンタイン(テレピン)だったり、ぺトロールであったりします。また乾性油が含まれているものと含まれていないものがあるので、成分表記を確認しましょう!
ダンマルワニス
マスチックワニス
パンドル
4-2 描画用ワニス
画面修正用ワニスとは、制作の途中で、いったん乾燥した画面全体にうすく塗り、つやを均一にするものです。なぜそのようなことをするのかというと、つやが均一でないと、場所によって色調が違って見えて描きづらいからです。
代表的なものはルツーセです。2~3度塗り重ねて全体のつやを均等にします。ルツーセには、上に塗る絵具の固着をよくする効果もあります。塗るときは、柔らかい筆を使用します。硬い筆だと筆跡がついてしまったり、固まりきっていない絵具を削いでしまったりするからです。また、霧吹きを使用するという方法もあります。
ルツーセ
5 完成後に画面を保護するもの
油絵が完成したら画面保護用のワニスを塗り、空気中のガスやほこりなどから作品の表面を守る必要があります。画面保護用のワニスは空気の通気を遮断するので、作品が完全乾燥してから(目安は6~12カ月後)でないと使用できません。完全乾燥する前に塗ってしまうと、空気が遮断され、絵具は完全乾燥できなくなるからです。
完全乾燥を待たずに画面を保護する場合は、指触乾燥後(指で触って乾燥している状態)に使えるものを使用します。
5-1 完全乾燥後用の画面保護ワニス
画面保護ワニスはタブローと呼ばれます。タブローは合成樹脂やダンマル樹脂をベースに作られています。
タブローには再溶解性という性質があります。再溶解とは再び溶けるという意味です。タブローはぺトロールなどで溶かせるので、古くなったら溶かして新しく塗り替えることができます。塗り替えを繰り返すことによって、歴史的な名画は保存状態を維持しています。
また、つや消し(マット)に仕上げたい場合は、ホルベインのスプレー マット タブローがおすすめです。
タブロー
マットタブロー
5-2 指触乾燥後用の画面保護ワニス
完全乾燥していなくても、指触乾燥していれば使える画面保護ワニスをご紹介します。通常のタブローは空気を通気しないので完全乾燥後でないと使用できませんが、通気性のあるタブローもあります。通気性のあるタブローは、絵の表面が指で触って乾いている状態であれば使用できます。展覧会に出品するなどの理由で、完全乾燥を待てない場合に便利です。通気性のあるタブローは、通常のタブローよりも保護効果が弱いので、6~12カ月たったら、ぺトロールなどで溶かして通常のタブローに塗り替えます。
指触乾燥後に使えるタブロー
6 その他の画用液
ここまでで基本的な画用液の解説は終わりです。画用液はとても種類が豊富で、この記事内で紹介しきれないものもたくさんあります。ここでは少しだけほかの画用液を紹介します!
6-1 絵具剥離剤
油絵具を除去するための溶剤です。絵の修正や用具の清掃に使われます。ストリッパーやリムーバーと呼ばれます。筆やパレットについて固まってしまった絵具を除去するときなどによく使用されます。
6-2 金箔接着剤
西洋では中世から、祭壇画やイコン(聖像画)などの背景に金箔地が使われていました。現在でも、金箔を使ったクラシカルで高貴な表現は人気があります。ホルベインのジャパン ゴールド サイズは樹脂ワニスを使用したもので、ターペンタイン(テレピン)で約3倍にうすめて使用します。金箔の貼り方が気になる方は商品詳細ページをご覧ください!
まとめ
今回は、油絵の画用液の種類と用途についてご紹介しました。この記事がみなさまの画用液選びのお役に立てれば幸いです。まずは、扱いやすいペインティング オイルから使ってみて、慣れてきたらオリジナルの調合溶き油も作ってみましょう!
今回紹介しきれなかったものもたくさんあり、当ショップでは画用液を、豊富な品揃えでご用意しております。さらに世界堂では、他店に比べてお買い得価格でご用意しております。たとえば、ホルベイン・クサカベ・マツダなどのメーカーの画用液が30%オフ!世界堂オリジナル画用液もたいへんお買い得価格です!
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