アクリル絵具で多彩な表現を!特徴と使い方を解説!
アクリル絵具は水彩絵具と同じような感覚で、水で溶いて描く絵具です。加える水の量を調節することで、透明水彩風にも不透明なガッシュ風にも仕上げられるのが特徴です。
専用のメディウム類も多岐に展開されており、様々なマチエール(画肌)づくりを楽しめます。水彩絵具や油絵具と比較すると歴史の浅いアクリル絵具ですが、表現の幅が広いことからアーティストはもちろん、デザイナーや様々なジャンルの作家から広く支持を得ています。
また、色々な素材に描くことも可能な為、絵画のみに留まらず身近な素材に絵付けするなどのクラフトアートも楽しめます。
・アクリル絵具と水彩絵具の違いとは?
・アクリル絵具で描く為に必要な道具
・支持体について
・制作に便利な道具
・アクリル絵の具の基本的な使い方
・メディウムについて
・アクリル絵具の応用的な使い方、ポイントをご紹介!
・油絵具との併用について
・まとめ
アクリル絵具の特徴とは?
アクリル絵具は、色の元となる顔料とアクリル樹脂を練り合わせて製造されています。
アクリル樹脂はプラスチックの一種であることから、絵具も独特のツヤを持ちます。天然の樹脂や膠(にかわ)を顔料と混ぜた油絵具や日本画の絵具と違い、アクリル絵具は石油化学の発達によって生産可能になった画材なのです。
そんな馴染み深くも意外と知らない、アクリル絵具の特徴をご紹介します。
乾くのが早い
アクリル絵具の大きな特徴のひとつは、乾くスピードの早さです。キャンバスや紙以外の支持体でも、水彩絵具と同じくらいの早さで乾きます。
多彩な作風が可能
水分量の調節やメディウムを使用することにより、水彩風・ベタ塗り・油彩風など、多様な作風で仕上げることができます。
様々な支持体に描ける
紙やキャンバスのみでなく、木・布・石など幅広い素材に描ける汎用性も備えます。表面が油性のもの以外であれば、ほとんどの素材に描くことが可能です。
耐水性・耐久性
アクリル絵具は水で溶いて使用しますが、乾くと耐水性になります。また絵具の層をしっかり重ねると、衝撃に強く耐久性のある画面になります。
油彩風の重ね塗り表現ができる
アクリル絵具は油彩のような重ね塗り表現が可能です。
また油彩画において、油絵具のみで重ね塗りをする場合は下の層が乾くまで時間がかかってしまいますが、アクリル絵具で下塗りをすれば、比較的早く乾くため短時間で仕上げることも可能です。
メディウムのラインナップが豊富
アクリル絵具には、盛り上げたり艶を調整するためのメディウムが豊富にあります。下地のマチエールや表面の質感をメディウムで変化させることによって、さまざまな表現が可能です。
マットで均一な平面表現ができる
アクリル絵具も水彩絵具と同じように不透明な「ガッシュ」という種類の絵具があります。アクリルガッシュは水彩のガッシュに比べて、よりデザインの平面構成などに適したマットで均一な画面をつくることが可能です。
「ガッシュ [ gouache ]」 は元々、不透明水彩技法を指すフランス語で、現在では不透明な絵具を指します。
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アクリル絵具と水彩絵具の違いとは?
アクリル絵具は水彩絵具と同じく水溶性の絵具ですが、アクリル絵具の成分は「顔料」+「アクリル樹脂」、水彩絵具は「顔料」+「アラビアゴム」です。
比較すると大きく下記のような違いと共通点があります。
アクリル | 水彩 | |
---|---|---|
水による希釈 | ○ | ○ |
耐水性 | ○ | × |
乾燥後の修正 | △ | ○ |
耐久性 | ○ | △ |
描ける素材 | 多い | 少ない |
厚塗り | ○ | × |
マットな表現 | ○ | △ |
耐水性であるアクリル絵具は、絵具の層を重ねたり、厚塗りをしたりすることができます。
それに対して水彩絵具は耐水性ではないので、乾燥後に水で溶かし、消したりにじませたりすることができます。
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アクリルで描く為に必要な道具
アクリル絵具セット
初心者の方はまず12~24色セットを購入し、後から徐々に必要な色を足していくと良いでしょう。
パレット
使い捨ての紙パレットがお手軽でおすすめです。多量の絵具を使用する際は日本画用の小皿があると便利です。
筆洗器
コンパクトにまとめられるタイプと、容量が多く安定感のあるタイプがあります。
筆(アクリル画向き)
アクリル画向きのナイロン製の筆の他、水彩用の軟毛、日本画用の筆なども使えます。始めの内はナイロン製の丸筆(6号~10号)を数本と、広い面や下塗り用の刷毛が1本あると便利です。
※イーゼルを使用せず卓上で描く際は、短軸の筆が扱いやすくおすすめです。
ペインティングナイフ
パレットの上で絵具を混色したり、絵具の厚塗りや盛り上げをする際に使用します。他にもシャープな線を描いたり、引っ掻いたりするなど、1本あるだけで幅広い表現が可能になります。
支持体について
続いて、アクリル絵具での制作に向いている支持体をご紹介致します。
イラストボード・キャンバス
スケッチブック・紙
※紙を使用する際は水分の吸収により表面が波打ってしまう為、木製パネルに水張りをして描く事をおすすめします。
★アクリル絵具は色々な素材に描くことが出来る為、必ずしも紙やキャンバスに囚われる必要はありません。木・石・布・ガラスなど、自分の描きたい素材にチャレンジしてみるのも一興です。
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制作に便利な道具
制作時にあると便利な道具をご紹介します。
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筆先や描いた箇所の水分量を調節する際に使用します。
霧吹き(水差し・スポイト)
アクリル絵具は乾燥が速い為、パレットへ出した絵具が乾燥しないよう、水分を足す必要があります。また、描いた箇所で乾く速さに調整が必要な場合にも使用します。(※霧吹きはホームセンター等でご購入頂けます。)
筆洗液
筆に付いたアクリル絵具の汚れを綺麗に洗浄します。絵具で固まってしまった筆も、一晩付け置きして洗うと再生出来ます。
アクリル絵の具の基本的な使い方
水で溶けるアクリル絵具は水彩絵具と同じような感覚で描くことが出来ます。特筆する手順やルールは特にありません。たっぷり水を含ませて描くと水彩画風に、絵具を厚く盛り上げて描くと油彩風に仕上がります。しかし、アクリル絵具は「乾燥が速く、乾くと耐水性になる」という特徴がある為、下記の点に注意して制作に臨むと良いでしょう。
制作中は筆を水につけたままに!
アクリル絵具は乾燥が速い為、使った筆を放置するとそのまま固まってしまいます。一度使用した筆は水へ浸けたままの状態にし、制作後に水で洗い流して穂先を整えましょう。
絵具は使う分だけ出す!
アクリル絵具は乾くとフィルム状になり、且つ耐水性になります。その為、パレット上で保管してそのまま使い続けるといった使用方法は向きません。制作時は使う色を使う分のみ、パレットへ出すようにします。描いている際も霧吹きや水差しで適宜水分を与え、乾燥を防ぐ必要があります。
描き出しは薄塗りを重ねて!
一度乾いたアクリル絵具は後から水で落としたり、色を淡くすることは出来ません。描き初めは薄い色を多めの水で溶いて、重ねながら徐々に描き進めるようにしましょう。
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メディウムについて
アクリル絵具の専用メディウムは、各メーカーから様々な用途の物が展開されています。
これらを使用することで、様々なマチエールづくりが楽しめるのもアクリル絵画の魅力の一つです。
「マチエール」とは表面の質感の事で、画肌・テクスチャとも言われます。描くモチーフに合わせて絵具を盛り上げたり、部分的にざらざらした質感にすることなどを指します。
メディウム類を一切使用せずに描くことも出来ますが、使用する事で表現の幅が広がり、より自由度の高い制作が行えるようになります。是非メディウムを使用した制作にもチャレンジしてみましょう。
ここでは代表的なメディウムをいくつかご紹介致します。初心者の方であれば、まずは下地材のジェッソと、盛り上げ用のジェルメディウムから始めるのがおすすめです。
ジェッソ…下地材 ★初心者にもおすすめ!
絵具の発色とのりを良くする為の地塗り材です。予め支持体へ下塗りをしておくと、絵具をのせた際により鮮やかな色味になります。併せて刷毛の購入もおすすめ致します。
モデリングペースト…下地用
立体感を出す為の盛り上げ用地塗り材です。厚く塗りすぎるとひび割れが起きる為、水で薄めて数回塗り重ねるのがおすすめです。ナイフや彫刻刀で削ることで、自分の思う形に整えることも出来ます。
ジェルメディウム…描画用 ★初心者にもおすすめ
絵具の盛り上げ用に使用します。絵具へ混ぜると透明度が増し、厚いガラスのような光沢感のある膜が出来ます。固着力が強い為、コラージュ技法の糊代わりとしても使えます。
リターディングメディウム(リターダー)…描画用
絵具の乾燥を遅らせる為のメディウムです。筆跡の残らない平らな面を作ったり、ぼかしやグラデーションをつくる際に最適です。一定量を超えると乾かなくなることがある為、使用量には注意が必要です。
上記の他にも仕上げ用のスプレー等、様々なものがあります。是非自分の興味のあるマチエールづくりや表現方法にチャレンジしてみてください。
アクリル絵具の応用的な使い方、ポイントをご紹介!
プライマーについて
アクリル絵具は様々な素材に描けるという特徴がありますが、陶器やガラスのように水分を吸収しないものへ描く際は、その素材専用のプライマー(下塗り材)を使用することをお薦め致します。また、プライマーを使用した場合でも、吸湿性の無い素材の場合は強く擦ると絵具が剥がれてしまう為、作品の扱いには注意が必要です。
コラージュ技法について
「コラージュ」とは画面上に絵具以外の異なる素材を貼り付け、構成する技法の事を指します。写真や印刷物の切り抜き、紐、皮、針金など、貼り付けられるものなら素材は自由です。アクリル用のジェルメディウム、マットメディウムは固着力が強い為、コラージュをする際の糊代わりとして使用出来ます。これを応用し、箔を貼り込んだりすることも可能です。
マスキングについて
シャープな線をつくりたい際はマスキングテープがあると便利です。キャンバスのように表面に凹凸のある支持体へ描く際は、貼ったテープの隙間から絵具が染み出てにじむことがあります。にじみを防ぐ為には、予めマスキングテープを貼った上からジェルメディウムを塗り、余分を拭き取ってから絵具を塗り重ねます。その後テープを静かに剥がすと美しく仕上がります。
※水彩用のマスキング液を使用する際は支持体との相性もある為、一度お試し頂いた上でのご使用をおすすめ致します。
油絵具との併用について
アクリル絵具と油絵具は、水性と油性の違いから互いを混ぜて使用することは出来ません。
併用が出来るのは、「油絵具の下地として」アクリル絵具を使用する際に限られます。油絵具の上からアクリル絵具を重ねることは出来ない為、描く順番を誤らないように注意しましょう。
例えば、アクリル絵具用のジェッソを使用した上で油彩を描いたり、下絵を描くときのみにアクリル絵具を使用するといった併用方法が可能です。
特にジェッソの併用は現在メジャーな手法となっており、これはアクリル用ジェッソの方が油彩用の下地材よりも圧倒的に乾燥時間が速いところに理由があります。
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アクリル絵具~まとめ~
- 水分の量次第で水彩風にも油彩風にも描ける!
- 乾燥速度が速く、乾くと耐水性になる!
- メディウム類が豊富で多様なマチエールづくりを楽しめる!
- 色々な素材に描ける!
アクリル絵具は自由度が高く、汎用性のある絵具です。アート、デザインに留まらず、ちょっとした塗装や絵付けなど、多目的に使用出来ます。
また、様々なマチエールと作風を模索出来るのもアクリル絵具ならではと言えるでしょう。「キャンバスや紙以外の支持体にも描きたい」 「マチエール(画肌)づくりにチャレンジしたい」という方に強くおすすめ出来る絵具です。
油絵具や水彩絵具では成しえない、アクリル絵具ならではの表現に挑戦してみては如何でしょうか?
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◆補足:アクリルガッシュについて (アクリル絵具との違いとは?)
「アクリル"ガッシュ"」は「アクリル"絵具"」と混合されがちですが、「アクリルガッシュ」は「アクリル絵具」とは特徴が異なる別の絵具です。
基本的な使い方は同じですが、アクリルガッシュは顔料がより多く使用されている為、アクリル絵具よりも発色が良く、不透明性があるのが特徴です。マットな質感で均一的な画面(ベタ面)を作ることに向いており、デザイナーなどから多くの支持を得ています。
その為、アクリル絵具独特のツヤが好みでない場合は、ガッシュへ切り替えてみるのも良いかもしれません。また、色彩を鮮やかにムラなく塗りやすいことから、美術予備校ではアクリルガッシュを推奨する傾向にあります。しかし、耐久性や耐光性はアクリル絵具よりも劣る為、完成した画面は傷つきやすく繊細です。作品の保管方法や展示場所には注意する必要があります。