デッサンとは何か? 学ぶ目的と描き方のプロセスを解説

絵を描く上で基礎となるのが「デッサン」です。絵やデザインを学び始めたばかりの方はまずデッサンから取り組むのではないでしょうか?デッサンを学ぶ意味を理解することで、よりしっかりと目的意識を持ってデッサンに取り組むことができます。今回はデッサンについて解説し、学ぶ目的と描き方のプロセスをご紹介します。

デッサンとは何か

デッサン(dessin)という言葉は、フランス語で「線を引く」という意味です。一般的にデッサンは、鉛筆や木炭などの描画材を使用し、モチーフの形をモノトーンでとらえて描くことを言います。日本語で「素描(ソビョウ)」と言われることもあります。

デッサンはおもに形や光をとらえ、基礎画力を身につけるために学ばれます。美術やデザインを専門とした学校などの試験でも、デッサンの課題がよく出題されます。

デッサンのモチーフ

デッサンのモチーフは大きくわけて「石膏像」「人物」「静物」の3つです。学ぶ目的はそれぞれ異なり、石膏像デッサンは正確なプロポーションをとらえる練習になり、人物デッサンは人体の理解を深めることができます。静物デッサンは、モチーフのそれぞれの質感の描き分けや絵画空間を作る練習になります。

デッサンを学ぶメリットとは?

対象物の構造を三次元的に理解して描く練習になる

デッサンは光と影を描き分けることによって、モチーフの形を三次元的に表現します。モチーフの正面・側面・上面・下面や回り込んでいる形を意識して描くことによって、モチーフの形がどのようにして成り立っているのかを理解します。

対象物のプロポーションを正確にとらえる練習になる

石膏像デッサンや人物デッサンは、描いた絵の中のプロポーションがズレているとすぐにわかります。そのため、プロポーションを正確にとらえる練習になります。特に石膏像は、正解の形が一つであるため、正確さが一番求められるモチーフとといえます。

対象物の質感を描き分ける練習になる

モチーフの表面の質感や材質によって、光の反射のしかたが変わります。さまざまな質感のモチーフを描く静物デッサンなどでは、明暗のコントラストや、細部の描きこみによってそれぞれのモチーフの個性を描き分ける必要があるので、質感を描き分ける力が身につきます。

デッサンを学ぶ目的とは?

美術系の学校を受験する

藝大・美大受験では、デッサンの課題が出題されます。油彩画・日本画・版画などのファインアートの専攻はもちろん、デザインの専攻でも出題されます(※学校や専攻により内容は異なります)。受験生は学校や美術予備校でデッサンの技術を学びます。

デザイン・クリエイティブ系の仕事に就く

3Dモデラーやアニメーターにはデッサン力が必要とされます。また、服飾デザインやプロダクトデザインになどおいても、イメージ図を描く際にデッサン力があれば、完成形をよりリアルに想像できるスケッチが描けます。

具象画を描く

パブロ・ピカソ Vieil hommeasis Mougins,1970

具象画にはいろんなスタイルがあり、必ずしもリアルに描かなければならないわけではありません。デフォルメをしたり、抽象化することによって描き手の個性を表現することができます。ですが、デッサン力を身につければ、より説得力のあるデフォルメや抽象化を行うことができます。奇抜なタッチと色彩で有名なあのピカソも、デッサン力を身につけていたからこそ、強烈なオリジナリティのある表現を生み出すことができたのです。

デッサンを描くプロセス

今回は、卓上静物デッサンをもとに、デッサンを描くプロセスをご説明します。

プロセス1:構図を決める

まず構図を決めます。構図は絵の印象を決める重要な要素です。紙やキャンバスは、変形型やシェイプドキャンバスでない限り、だいたいの場合は四角形です。四角形の中にいかに絵の要素を配置するかで、絵の視覚的な美しさがガラリと変わります。
自分でモチーフの配置を決める場合は、絵の構図を意識して配置しましょう。モチーフが事前に組まれていてそれを動かせない場合は、モチーフの位置を絵の中で調整しても大丈夫です。構図が決まったら当たりをつけてモチーフを画面上に配置します。

構図を決めるコツ
画面全体を意識してモチーフを配置しましょう。上下左右のどこかの位置が空きすぎたり、偏りすぎないように全体のバランスを意識します。

プロセス2:光を設定する

次に光源の設定します。どの向きからどのくらいの強さの光が当たっているのかを決めます。物の形は光の反射によって見えているので、光源の設定はデッサンにおいて必要不可欠です。光源の設定によって、明るいところ、影のところ、稜線の位置が決まります。

光源を設定するコツ
現実空間では、モチーフに対してさまざまなところから光が当たります。ですが、複数の方向から光が当たっている設定で描くと、形を描きおこすことがかなり難しくなります。そのため、光源は絵の中で一つに絞って描きましょう

プロセス3:全体的に描き進めていく

構図が決まり、光源の設定も決まったら、全体的にトーンを迷いなくのせていくことができます。描く作業がスムーズに進むかどうかは、最初の設定がしっかりと行われているかどうかにかかっています。

全体的に描き進めるコツ
トーンを広い範囲にのせていくだけでは、全体的にぼんやりとぼやけてしまうので、ポイントとなる部分や稜線などの細部を描きこみながら全体的に描き進めていきましょう。

プロセス4:細部を描きこむ(描写の密度を上げる)

全体的に描けてきたら、細部を描きこんで完成度を上げます。細部をじっくり観察し、描写の密度を上げることによって、モチーフのそのものらしさにせまります。

細部を描きこむコツ
モチーフの質感によって描きこみ方や明暗のコントラストを調整しましょう。たとえば、やわらかいものやマットな質感のものはコントラストの変化を緩やかに描き、硬いものやツヤのある質感のものはコントラストを強く描くとモチーフの印象に近づきます。

デッサンにオススメの商品30選

デッサンをするにあたって必要な商品をご紹介します。

鉛筆・木炭

デッサンでよく使用される鉛筆は、三菱鉛筆の「ユニ鉛筆」と「ハイユニ鉛筆」です。ユニはオーソドックスな描き味、ハイユニは、よりなめらかな描き味です。海外製の鉛筆だとステッドラーの「ルモグラフ」が人気です。

木炭で有名なのは伊研です。代表的なヤナギ炭は細軸から太軸まで、また濃度・硬さに応じてさまざまな種類の木炭を揃えています。また、アートンからはヤナギ木炭のリーズナブルな価格帯のラインナップが公表発売中です。だいたいの木炭は中の芯を抜いて使用するので、木炭をご購入の際は「木炭用芯抜き」もお忘れなく。

カルトン・木製パネル

木炭紙(画用紙)を固定するための下敷きです。「ダブル」のものだと、間に作品を挟んで保管出来ます。持ち運びの際は専用のカルトンバッグがあると便利です。カルトンに紙を固定する際はクリップを使用します。

また、木製パネルに画用紙を画鋲などで固定して描く用法もあります。紙のサイズにあったパネルを選びましょう。

鉛筆デッサンのには画用紙(画学紙)を、木炭デッサンには木炭紙を使用します。木炭デッサンの場合は、木炭紙を2~3枚下に敷いて描きます。

消しゴム

デッサンにおいて消しゴムは、描いた箇所を消すためだけではなく、トーンを明るくしたり、ハイライトを表現するためなどにも使用します。基本的な作業にはやわらかいネリゴムを使用します。金属やガラスの強いハイライトを表現する際は、硬いプラスチック消しゴムがおすすめです。

ガーゼ・擦筆(サッピツ)

ガーゼや擦筆(サッピツ)は、描いた部分を擦ったり軽くなでたりして、画面の調子を整える際に使用します。特にガーゼは木炭デッサンの必需品で、粉をとったり、タッチを加減したり、グラデーションをつくる時などに活用します。

フィキサチーフ

完成後に鉛筆や木炭の粉を定着させ、作品を保護するために使用します。スプレータイプが手軽でおすすめです。

デスケル・はかり棒

デスケルとは、描く対象物を画面にどのように収めるかの構図を練る際に使用する道具です。紙の縦横比ごとに種類があるため、使用する紙に合ったものを選ぶ必要があります。また、モチーフの形や比率、距離を測る際には、はかり棒を使用します。

デッサン参考書籍

デッサンは奥が深く、参考書籍もさまざまなものが出版されています。当ショップではおすすめの書籍を取り揃えていますので、ぜひご活用ください!

さいごに

デッサンは、アート、デザイン、建築などの創作活動において、基本的なスキルとして重要な役割を果たします。デッサンを学ぶ目的は多岐にわたり、どこまでの完成度を求めるかは目的によって異なります。自分に合ったペースと方法でデッサンに取り組んでみましょう!