「油絵具を速く乾かす方法」油絵をサクサク描く絵具乾燥術

油絵具は、水彩絵具やアクリル絵具と違い、乾く速度が非常にゆっくりです。「展覧会や公募展の締め切りなのに作品が乾いていない」「乾いていない絵具の上に絵具をのせて、下の絵具をはがしてしまった」といったトラブルの経験がある方も多くいらっしゃるかと思います。そのようなトラブルを回避し、サクサクと効率よく油絵を描くためには、油絵具が乾く仕組みと、早く乾かすための方法を知っておく必要があります。
では、油絵具はどのような仕組みで乾き、どのような方法で乾燥速度を速めることができるのでしょうか?この記事で詳しくご説明します!

油絵具が乾く仕組み

油絵具はなぜ乾きが遅い?

油絵具は、水溶性の絵具と違い、油そのものが空気中から酸素を取り込み、だんだんと粘り気が増し、固形体となることによって乾きます。これを酸化重合と言います。油絵具の場合、乾くという表現よりも固まるという表現のほうがふさわしいかもしれません。
水溶性の絵具は乾くと水分が蒸発し、乾燥前と比べて体積が減りますが、油絵具の場合は体積が減らずに厚みのある表現が可能です。

乾燥を速めるための「乾燥促進剤」

絵具を早く乾かすためには、シッカチーフという液状の乾燥促進剤や、メディウムという絵具状の乾燥促進剤を使用します。両方とも、画用液に混ぜるか、もしくは絵具に直接練りこんで使用します。

シッカチーフとメディウムの特徴とオススメ商品

シッカチーフ

シッカチーフには、淡色のものと褐色のものがあります。淡色のものはおだやかに、褐色のものは強力に乾燥を促進します。褐色のものはけっこう茶色いですが、乾燥とともに色は淡くなります。
混ぜる分量は、絵具に直接混ぜるときは10%くらいまで、乾性油に混ぜるときは30%くらいまでにとどめます。シッカチーフは、混ぜすぎると絵具の上層と下層の乾燥速度のバランスが崩れ、亀裂やちぢみを引き起こすので、適量を守って使用することが重要です。
1日~数日で絵具を乾燥させることができます(乾燥時間は季節や気温などの条件によって異なります)。

淡色シッカチーフ

褐色シッカチーフ

メディウム

メディウムはシッカチーフより速く乾き、メーカーによってさまざまな種類のものが造られています。乾燥速度、透明性、光沢、粘度といった特徴を加味して、適切なものを選びます。
メディウムの成分はアルキド樹脂が主です。アルキド樹脂は20世紀初頭に工業化された比較的新しい合成樹脂で、乾性油同様、酸化重合により硬化します。塗膜は強靭で、安定性も良いので、丈夫な作品がつくれます。混ぜる分量に制限はありませんが、たくさん混ぜると透明度が高くなります。
また、メディウムは褐色のものが多いので、淡い色に使用する場合は色を濁らせないために、透明性が高いものがおすすめです。
メディウムは、制作の制限時間が限られている美大受験の実技試験では必需品となっており、多くの受験生が使っています。

「実は完全には乾いていない?」完全乾燥とは

油絵具の乾燥の段階には表面乾燥完全乾燥があります。表面乾燥とは、手で触っても手につかない状態のことです。表面が乾燥していると絵具の層を重ねることができます。シッカチーフやメディウムを使って乾いた状態とは、この表面乾燥の状態です。
表面が乾燥すると一見乾いているように見えますが、この状態ではまだ完全に乾いてはいません。油絵具が完全乾燥するには約180日間(半年)かかるとされています。タブローなどの表面保護剤を塗布するのは、完全乾燥後にしましょう。完全乾燥前に保護剤を塗布してしまうと、絵具に酸素がいきわたらなくなり完全乾燥することができなくなるので、この点は注意が必要です。

さいごに

油絵具の乾燥時間を早めることでサクサクと制作を進めることができます。シッカチーフやメディウムを使って油絵具の乾燥時間をコントロールしてみましょう!
油絵具の完全乾燥には約180日かかりますが、表面が乾燥していれば持ち運ぶことができ、展示することもできます。展覧会や公募展前の追い込み作業や実技試験などで乾燥促進剤をぜひご活用ください。