筆のお手入れ方法

普段絵を描く人には欠かせない「筆」は消耗品であり、使い続ける事による劣化は避けられませんが、以下のような筆のお手入れを定期的に行うことにより、長持ちさせることは可能です。
愛用の筆を長く使って頂けるよう、お手入れ方法をいくつかご紹介致します。

<目次>

◆油絵具を使った後の筆の洗い方

油絵具は専用の筆洗液を使って汚れを落とします。

①.汚れてもいい布で筆についた絵具を取る。

➁.ブラシクリーナー(筆洗液)の入った筆洗器に筆を漬け、軽く押しながら擦る。
(網目に毛が入り込まないよう優しく)

➂.筆に付いた筆洗液を切り、布で拭き取る。

④.➁~➂を数回繰り返す。

<補足>

  • 細筆を筆洗器で洗う場合は網によって毛先が広がったり折れてしまうことがある為、筆洗液を入れた絵皿で洗うと良いでしょう。
  • 筆洗器での洗浄だけでは、穂首根元に絵具が残りやすい為、次にご紹介する石鹸洗いも併せて行うとより綺麗に絵具を落とすことができます。
  • 穂先がカチカチに固まってしまった時は、水溶性クリーナー等での浸け置きもお勧めです。

◇石鹸での洗い方

①.固形石鹸を手に取り、その上で筆に石鹸を含ませます。

➁.手の平で石鹸を馴染ませたら、指で穂首の根元から穂先にかけて軽くしぼり、さらに馴染ませます。

➂.水で洗う。流水より溜め水で洗う方が絵具が取れやすいです。

④.①~➂をもう一度行う。石鹸が泡立ちやすくなると汚れが取れている証拠です。

<補足>

  • 固形石鹸以外では専用クリーナーでも良いでしょう。
  • 人の髪の毛のシャンプー同様、根元に汚れが残らないよう、しっかりと優しく洗ってあげることが毛を長持ちさせる秘訣です。

◆水彩絵具を使った後の洗い方

油絵具と違って水彩絵具は水溶性の為、水だけで汚れを落とすことができます。

①.水の入った筆洗器に軽く押しながら擦り、絵具を落とす。

➁.布を当て、穂首根元から穂先にかけて軽く絞るように拭く。

➂.①~➁を数回繰り返す。

<補足>

  • 仕切りのある筆洗器の場合は、絵具を落とす際の汚れても良い水と、すすぎに使う綺麗な水ができるよう洗い分けましょう。
  • 絵具の残留が気になる場合は、石鹸で洗うとより綺麗になります。(石鹸を使った洗い方は上記参考)
  • ※アクリル絵具等の不透明水彩は速乾性があり、乾くと耐水性になるため、乾いた絵具を剥がす際に筆を痛めたりしやすいので必ず乾ききる前に洗い落としましょう。

◇筆の乾かし方

洗い終えた筆は布で水気を拭き取った後、写真のように穂先を下に向けて、風通しの良い場所で乾燥させましょう。

それが難しい場合は、穂先を浮かせ寝かせた状態で乾燥させて下さい。

<補足>

  • 穂先を上に向けた(立てた)状態で乾かさないように。
    穂首根元に水気が溜まり十分に乾かず、根腐れや抜け毛の原因になります。
  • ドライヤーで乾かさないように。
    熱で毛や穂首の形状が変質してしまう恐れがあります。
  • 通気性が良く直射日光が当たらない場所で乾かしましょう。

◆水筆ペンの手入れ方法

使用後は必ず、①.カートリッジの水を捨て、根元部分に絵の具がたまりやすいので➁.穂首部分をしっかり洗い、➂.十分に乾燥させてください。乾かないうちにキャップをしてしまうと傷みやカビの原因になります。
乾かし方は上記の筆の乾かし方と同様、穂先を下に向けて吊るか、寝かせて自然乾燥させてください。

◇-番外編- ナイロン毛筆の毛クセやハネの直し方

ナイロン毛製の筆で、穂首が曲がったり毛が跳ねたまま戻らない…となった経験はありませんか?
状態や原因にもよりますが、程度によっては回復させることが出来ます。
ナイロン毛製の筆で穂首が曲がったり、毛が跳ねたまま戻らない際の簡単な直し方をご紹介致します。

①.80度~100度のお湯を深めの器に入れ、穂首部分を浸し軽く動かす。

➁.タオル等の上に置き水気を取る。(やけどには十分お気を付けください。)

➂.形を整えて乾かす。

なおこの方法は、主に保管状態が原因のクセやハネには効きますが、摩耗による劣化には適用されない場合が多いです。
この方法を試してみても改善せず、依然使いずらさが残る場合は、繊細な作業以外での使用に切り替えるか、買い替えのタイミングとも言えます。

※獣毛を使った筆について

獣毛は毛に含まれる油分の関係上、熱湯に漬ける事は筆に良くありません。普段から筆の保管には十分気を付けましょう。
どうしてもクセが気になるという場合は、お湯につける部分を穂先のみにし、画材メーカーから販売されている筆毛保護材によるケアをお願い致します。

◆おわりに

以上のお手入れ方法を、欠かさず行うことによって筆の消耗を遅れさせる事が出来ます。
ポイントは毛先よりも根元部分を丁寧に揉み洗いをするようにし、乾かす際は穂先を下に向けて乾かすことです。
根元部分は絵具が残りやすく、ここが汚れていると筆を痛める原因や穂先が割れることにもつながり筆の寿命が短くなってしまいます。
最初に筆は消耗品と言いましたが、丁寧に扱って頂く事によって5年、10年と使うことができます。
お気に入りの筆を見つけて、長く付き合っていくことができれば、作られた筆としてもこの上ない事と思います。