油絵具の黒と白|種類ごとに解説します。

「油絵具の黒と白には種類があるけど、なんとなくで選んでる」なんてことありませんか?
油絵具の黒と白には種類ごとに特徴があり、使い分けることによって表現の幅が広がります。
また、組み合わせや使い方によっては絵の画面上でトラブルを引き起こすことがあります。顔料ごとの特徴や用途を知ることによって、トラブルを未然に防ぐことができ、自分の描きたい絵に合わせて黒と白の表現をコントロールすることができます。

この記事では、油絵具の代表的な黒と白の種類を解説します。顔料によって色名がことなりますが、いったい何が違うのでしょうか? 順番にみていきましょう!

油絵具の黒の種類

まずは黒からみていきましょう。黒は一見するとすべて同じにも見えますが、白を混ぜたり、薄く塗ったりするとわずかに色があることがわかります。また、表面の質感や透明度などに違いがあります。

アイボリーブラック

クサカベ 油絵具 アイボリーブラック
アイボリーブラックは、赤みのあるブラックで、炭化させた動物の骨(骨炭)を顔料としています。昔、象牙(アイボリー)を使っていたのが名前の由来です。現在では、牛などの骨が使用されています。ホルベインの「油一」と「ヴェルネ油絵具」は本物の象牙から作られています。ほかの黒に比べると比較的透明度があるので混色用に使用されることが多いです。

アイボリーブラックを使用する上で気をつけなければならない点はカビ対策です。原料の骨にはリン酸カルシウムが大量に含まれており、それを養分にカビが発生する場合があります。アイボリーブラックには防カビ剤が配合されていますが、湿度の高い環境に長時間置いておくとカビが生えるおそれがあるので、絵の保管場所に気をつけましょう。

ピーチブラック

クサカベ 油絵具 ピーチブラック
ピーチブラックは、かつて桃の種を焼いて顔料とされていたことが名前の由来です。現在は縮合アニリン系の顔料でつくられています。色味は暖色と寒色の中間の色調で、油絵具の中では見た目が一番黒い黒です。

ランプブラック

クサカベ 油絵具 ランプブラック
ランプブラックは、ランプの油が燃焼した時にできる煤(すす)を顔料としたことから名づけられました。現在では化学合成して作られていますが、マット調で、墨のような黒です。青みがあるのが特徴です。

油絵具の白の種類

つぎは白の種類をみていきましょう。白に使われている顔料は、ほかの顔料との組み合わせ方や、どの作業工程で使用するのかによって、使用条件が変わります。間違った使い方をしてしまうと、絵具の層に亀裂や剥離が生じたり、色が濁ってしまうことがあるので用途に合わせて使い分けましょう。

シルバーホワイト

ホルベイン油絵具 シルバーホワイト
シルバーホワイトは最も古くからある古典的な白です。下塗りとして使用すると、上の層の絵具の定着が良くなり、亀裂も生じません。物質感のあるマチエールを作るのに向いており、乾燥するとしだいに温かみのある白になります。

シルバーホワイトは顔料に有毒な鉛白が使用されているので注意が必要です。

また、シルバーホワイトは混色に制限があり、硫化物を成分とする顔料の絵具(ウルトラマリンブルーの一部の色など)と混ぜると黒変してしまうので、そちらも注意が必要です。

ジンクホワイト

ホルベイン油絵具 ジンクホワイトSF
ジンクホワイトの顔料には、毒性のない亜鉛華が使用されています。混色に制限がなく、透明感があり、混ぜた色の持ち味を損なわない鮮明度に優れた白です。乾燥後の色調は、やや青みのある澄んだ白です。

注意点は、上に重ねた色に亀裂や剥離を生じさせることです。下塗りには不向きですので、上塗りのみに使用しましょう。

チタニウムホワイト

ホルベイン油絵具 チタニウムホワイト
油絵具の白の中で最も隠ぺい力と着色力が強い白です。少量で色を明るくできるので、明るい箇所やハイライトを描写する際に重宝します。また、混色制限がなく、下塗りから上塗りまですべての工程で使用できます。

油絵具の白の比較表

シルバーホワイト・ジンクホワイト・チタニウムホワイトのそれぞれの特徴を比較すると下の表のようになります。


シルバー
ホワイト
ジンク
ホワイト
チタニウム
ホワイト
下塗り ×
上塗り
透明度 半透明 半透明 不透明
混色制限 あり なし なし

※透明度の表記はメーカーによって多少ことなります。

初心者におすすめパーマネントホワイト

ホルベイン油絵具 パーマネントホワイトSF
取り扱っているメーカーは限られますが、パーマネントホワイトという名前の白があります。パーマネントホワイトは汎用性の高い白で、ホルベインやクサカベから発売されています。混色制限がなく、下塗り・上塗り両方に使え、チタニウムホワイトよりも落ち着いた白です。透明度は半透明(不透明寄り)。初心者の方にとって使いやすい絵具です。もし迷ったらパーマネントホワイトを選びましょう。

海外製チタニウムホワイトの注意点

海外のチタニウムホワイトの中には、ジンクホワイトの顔料が含まれているものがあります。例えば、ウィンザー&ニュートンのチタニウムホワイトに含まれている顔料の表記を見ると、「PW6,PW4」と書いてあります。PW6はチタニウムホワイトの顔料で、PW4はジンクホワイトの顔料です。ウィンザー&ニュートンのチタニウムホワイトは、ジンクホワイトの顔料が含まれているので、下塗りに使用すると、上に重ねた絵具に亀裂や剥離を生じさせることがあります。

また、マイメリ クラシコには「チタンジンクホワイト」という白があります。この白も同じく、チタニウムホワイトの顔料とジンクホワイトの顔料を混ぜて作られています。下塗りには不向きですので、上塗りのみに使用しましょう。

さいごに

油絵具の黒と白の代表的な種類をご紹介しました。今回ご紹介した黒と白以外にも、メーカーによって別の種類のものもあります。いろんな顔料のものを試して表現の幅を広げましょう!