筆の選びかた入門

みなさんは普段、どのように筆を選んでいますか?油彩・水彩・日本画/デザイン筆のそれぞれで、形や毛の組み合わせで様々な種類の筆があって、迷ってしまいますよね。

今回は世界堂オンラインショップが取り揃えている数多くの筆たちを、天然毛や化学繊維の種類からはじまり、油彩・水彩・日本画/デザインそれぞれの技法ごとの筆の形まで、分かりやすく比較&解説!!これから絵を描き始める学生さんも、久々に制作を始めよう!という方も、ぜひ改めて参考にしてみてください。

・筆の毛の種類
☆油彩筆選びのポイント
☆水彩筆選びのポイント
☆日本画/デザイン筆選びのポイント
・まとめ

※この記事では、世界堂オンラインショップに取扱いのある筆の種類を紹介しています。



筆の毛の種類

天然毛(動物の毛)


絵具の含みがよく、それぞれの毛質に特長があります。


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油彩画筆の代表格。硬毛で油絵具の粘りに負けない弾力と耐久性があり、また1本の毛の先端が2~3本に枝分かれしているのが特徴です。
狸(ラクーン)絵具の含みが良く、毛先に強さがあり、復元性が高いのが特徴です。
オックス 雄牛の耳の毛を使用します。軟調で絵具の含みが良く弾力があり、セーブルに準ずる優れた毛質です。
馬もポピュラーな筆用の毛です。やわらかい毛質でほどほどの復元性があります。他の動物の毛と混毛する際の副材としてもよく使われています。
イタチ(コリンスキー)弾力に富み、絵具の含みも良く、軟毛の代表的なものです。中でもコリンスキー毛は穂先のまとまりが良く細密な描写に適している最高級原毛です。コリンスキーを含めて「セーブル」と総称されています。
リス柔らかく細かい毛質でセーブルのような弾力はありません。反面、絵具の含みは抜群で穂先もよくまとまるのが特徴です。
山羊水の含みが良く、まとまりと耐久性に優れています。主材としても、混毛の際の副材としてもよく使われています。同じ山羊の中でも体毛の部位により毛質の硬さに違いがあります。
穂先のまとまりが良く、毛先は極めて軽妙です。特に白い毛のものが良質とされています。


化学繊維毛(PBT)

絵具の含みは天然毛には劣りますが、摩耗に強く比較的お手頃な価格です。


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ナイロン弾力があり穂先のまとまりが良く、量産できるため安価です。手入れがしやすいのでアクリル画用によく使われますが、絵具の含みにやや足りない部分があります。
リセーブル
ネオセーブル
ナイロンに特殊加工をほどこし、凹凸をつけることで天然毛に近付けたものです。他のナイロン毛に起こりやすい絵具の含みが不足するのをカバーしています。



☆油彩筆選びのポイント

原毛の種類、穂先の形状が豊富にあります。描き始めは絵具が多いので特にコシの強い豚毛のような硬毛を用い、後に中硬毛、仕上げに軟毛へと変えるのが一般的です。また油絵は筆のタッチに穂先の形が大きく影響します。色を変える際、その都度洗い落とすのは絵具の無駄も多くなり筆洗液の汚れも早まるので、数本を常時使用することをおすすめします。



※名前をクリックするとショップの商品一覧へ移動。
ラウンド
(丸)
・絵具の含みが良い
・細部の微妙な表現に便利
・方向性がないのでいきいきとした描画が可能
フィルバート
(丸平)
・初心者の方にも使いやすい
・下描きから仕上げまで使える
ロングフィルバート
(長い丸平)
・フィルバートより穂先の弾力が柔らかいのが特徴
・絵具の重ね塗りに使用
フラット
(平)
・最も基本的な筆
・下描き、おおまかに色をのせていくときに便利
ブライト
(短平)
・絵具の盛り上げや、力強いタッチ、表現を出しやすい
ファン
(扇)
・グラッシ技法※や、境界線をぼかすのに使います。
※溶き油をたっぷり加えて薄く溶いた絵具を、おつゆのように上から重ねて描き、透明感や色の深みを出します。



☆水彩筆選びのポイント

一般には軟毛を使用します。すばやくぼかしたり、長い線描をする場合があるので絵具の含みとコシが大切になります。絵具の含みや筆の弾力は毛質の長さと量により決まってきます。短穂で厚みのあるものは、弾力が強く、長穂はしなやかで弾力は弱くなりますが絵具の含みがよくなります。毛質はコシが強く穂先を生かしたものや、軟らかく含みの良いものなど用途に応じて選びましょう。



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ラウンド
(丸)
・絵具の含みが良い
・細部の微妙な表現に便利
・方向性がないのでいきいきとした描画が可能
フラット
(平)
・広い面塗りに最適
・グラデーションやぼかしの表現に
・乾く前の絵具のぬぐいにも便利
オーバル
(猫の舌型)
・絵具の含みが非常に良い
・穂先での線描きや面を使って平塗りも可能
・1本で多様な表現が可能
アンギュラー
(短剣型)
・面塗りや線描き、グラデーションの表現に便利
・乾く前の絵具のぬぐいにも便利
スクリプト
(線描型)
・長いストロークの線描に向いています
刷毛・水張りや下地塗りなど広い面を塗るときに便利
・グラデーションやぼかしにも使用



☆日本画/デザイン筆選びのポイント

穂先の長さや太さによる種類が豊富で、線の強弱やふくらみを利用した濃淡の表現など筆づかいが重視されます。混毛により筆づかいを良くしたり、筆先が効くようにしたりと工夫されているものが多くあるのも特徴です。

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平筆・広い面塗りに適しています
・グラデーションやぼかしの表現にも向いています
面相筆・細かい線描きに使用
・長い線を描くには、穂先の長めのものが便利
削用筆・日本画の代表的な万能筆
・細かい塗り込み、短い線描に向いています
・面相や彩色用としても使えます
付立筆 ・穂先が長いので線描きとして使用
・弾力や穂先の復元性が良く、濃淡の表現がしやすい
丸筆・絵具の含みが良い
・細部の微妙な表現に便利
・方向性がないのでいきいきとした描画が可能
彩色筆・日本画をはじめ、水彩、デザイン、イラストなど着色用筆として幅広く使用
隈取筆・ぼかしに適しており、絵具や墨を水だけ含ませ使用
・水彩の着色用としても使用
刷毛
(絵刷毛/唐刷毛)
・水張りや下地塗りなど広い面を塗るときに便利
・グラデーションやぼかしにも使用
※唐刷毛は絵具をつけずぼかしに使用



まとめ

いかがでしたか?まずはじぶんが描きたい絵のイメージを明確に決めてからそれに当てはまるものを選ぶのもよし、記事を読んで選んだ筆でどんな表現ができるか試してみるのもよし。皆さんの表現の幅がさらに広がれば幸いです!