【色の基礎知識】色彩・混色・配色について解説

作品制作やデザインにかならず必要となる「色」についての知識。「色」というと、当たり前のように知っているような気がしてしまいますが、色彩に関する科学はとてつもなく奥の深いものです。

私たち人間が認識できる色の数は100万色ほどだといわれています。ですが、絵を描く時などに意識的に使用できる色は限られたものとなります。だからこそ色見本帳や配色ノートが活用されています。

「思ったように色を作れない」「絵の中の色が単調になってしまう」なんてことはないでしょうか?今回はそんな「色」に関する基礎知識をご紹介します!

色の3属性とは?

色相・彩度・明度

色を測ったり表現したりする際に基本となるのが、「色相/彩度/明度」の3つの属性です。すべての色はこの三つの属性の値で示すことができます。色相="Hue" 彩度="Saturation" 明度="Brightness"をまとめて、「HSBカラーモデル」といわれます。画像編集ソフトなどで使用されるカラーピッカーではそれぞれ H・S・B で項目がわかれています。

色相は、「どのような色」かを表します。「赤」「青」「緑」「黄」などの色味のことで、それらの色を環のようにつなげると色相環ができます。環の中の反対側に位置する色同士を「補色」といいます。

彩度は、「どのくらい鮮やか」かを表します。もっとも鮮やかな色を「純色(ビビットカラー)」といい、色味を感じる色を「有彩色」、色味を感じない色を「無彩色」といいます。

明度は、「どのくらい明るい」かを表します。明るい色は白に近く、暗い色は黒に近い色となります。

これら「色相/彩度/明度」の組み合わせによって、色に無限のグラデーションが生まれます。

トーンマップ

トーンとは、明度と彩度の強弱によって表される色のグループのことをいいます。色相の同じ系列でも、色によって暗かったり明るかったり、濃かったり淡かったりします。これらのトーンをグルーピングして体系化したものをトーンマップといいます。有名なものは、1964年に(一財)日本色彩研究所によって開発された「PCCS(Practical Color Co-ordinate System:日本色研配色体系)」カラーシステムをもとにしたトーンマップです。

「純色」=最も彩度が高い色
「清色」=純色に白または黒を混ぜた色
「濁色」=純色にグレーを混ぜた色

たとえば青だけで見てみるとこのようになります。

青だけを抽出したトーンマップ

【オススメ商品】日本色研 PCCS カラートーンサークル

「PCCS(Practical Color Co-ordinate System:日本色研配色体系)」のカラートーン。トーンごとに12色の色相がペット板に印刷されているので、直感的にカラーコーディネートができます。色彩検定の勉強、洋服の配色を考える、ネイルアートのカラー・イメージメイキングなどにおすすめです。

【オススメ商品】日本色研 配色カード

日本色研は、色や形のもつ意味や、その使い方を研究し啓蒙普及に取り組んできた一般財団法人日本色彩研究所が、その研究成果の普及活動の一端を担い、色彩の教育教材を製作・販売する会社として、1964年に設立されました。そんな色彩研究の代表的会社が作った色見本帳。

【オススメ商品】DIC カラーガイド

1967年から出版され、印刷会社やデザイナーなどの間で色の指定や色合わせに利用される代表的な色見本帳。DICカラーや、単にDICとも呼ばれ親しまれています。色は、マンセル・カラー・システムやオストワルト・カラー、PCCSの色相環を元に、系統的に分類、配列され、カラーナンバーと色相、インキの配合比率が表示されています。

混色の基礎知識

次は混色についてです。混色には3つの方法があります。

加法混色

加法混色とは、赤(R)・緑(G)・青(B)を組み合わせて色を表現する方法です。加法混色は、色を重ねるごとに明るくなり、3つの色を重ねると白になります。スポットライトやディスプレイから発せられる色は、加法混色によって表現されます。これらの赤(R)・緑(G)・青(B)は、光の三原色と言われます。
光の三原色

減法混色

減法混色とは、イエロー(Y)・シアン(C)・マゼンタ(M)を組み合わせて色を表現する方法です。減法混色は、加法混色とは反対に色を重ねるごとに暗くなり、すべてを混ぜると黒になります。これらのイエロー(Y)・シアン(C)・マゼンタ(M)は、色の三原色と言われます。アナログで絵を描く場合はこの減法混色で表現することとなります。
色の三原色

中間混色

中間混色とは、複数の色が混ざって見えることによって、中間の色に見える混色方法です。中間混色には、 回転混色と並置混色の二種類があります。

回転混色とは、たとえばコマのような回転体の表面に複数の色を塗って高速で回転させると、目の中で色が混ざり合って中間をとった色に見えます。

並置混色とは、下の図のように、複数の色が細かく並ぶことによって目の中で色が混ざり合って、中間の色に見えることをいいます。色鉛筆やパステルなどでは、紙の上に乗った顔料が目の中で混ざって見えることによって色が表現されます。

市松模様も細かくすると一色に見える
色鉛筆の混色例

自然な彩度を表現するには?

アナログで絵を描く場合は、減法混色と中間混色で表現することがわかりました。では、混色のコツとはどのようなものなのでしょうか?

よくあるパターンとしては、色を暗くしたり鈍くしたりする場合は、黒を混ぜると考えがちです。ですが、絵を描く際に黒い絵具を使うと少し不自然になります。アナログでの調色においては、色を鈍くする場合は補色を混ぜます。その場合、たとえば黄色を鈍くする場合に混ぜる色は、紫となります。

自然界の色は意外と鈍い色です。鮮やかに見えても、それは隣り合う色の組み合わせによって相対的に鮮やかに見えているだけです。たとえば、鮮やかな花を、チューブから出したままの純色で描くと、発色は強くなりますが、人工的な印象の色になります。自然なトーンの絵を描くためには、鈍いトーンの繊細な描き分けが必要となります。

チューブから出した絵具のトーンを少し落ち着かせるために茶・紺・紫などの絵具がよく使われます。バーント・アンバーやプルシャン・ブルー、ミネラル・バイオレットなどが代表的です。絵具をそろえる際は、鮮やかな色だけでなく、渋い色も用意しましょう

色をにぶくする際は茶・紺・紫などの暗めの色を補色として混ぜる
自然な彩度は意外と鈍い色

【オススメ商品】日本色研 混色ガイド

つくりたいと思う色を窓から見えるようにするだけで、混色に必要な純色と白、黒の絵の具の割合が表示されます。色見本はPCCSに準拠した有彩色12色相・7トーンの合計84色で、色のかたよりがないように系統的に選ばれています。

使用する絵の具は、あか、しゅいろ、やまぶきいろ、きいろ、きみどり、みどり、あお、しろ、くろの9色で、市販の主要な水彩絵の具に対応しています。彩度・明度をコントロールするコツがつかめるオススメのアイテムです。

代表的な配色方法

どのような配色を選び取るかによって、表現できる作品の世界がガラッと変わります。たとえば、色の差が激しいか、落ち着いているかによって、作品から受ける印象がにぎやかになったり静かになったりします。

配色方法はたくさんあり、使う色によってもさらに可能性は無限大に広がります。ここでは代表的な配色方法を少しだけご紹介します。

ドミナント・カラー

色相を同一または似た色でまとめた配色。おちついて統一感のある印象になります。風景画だと、明け方や夕方など、風景が一色に染まるような時間帯の表現にむいています。また、色が持つ印象や意味を作品に強く反映させることができます。

ドミナント・トーン

トーンを同一もしくは似たものでまとめた配色。色相に幅があってもトーンがそろっているとまとまりが感じられます。トーンの持つ印象で表現することができます。コントラストが落ち着いた、淡い世界観を表現できます。

ト―ナル

中明度、中・低彩度の中間色だけで組み合わせた配色。中間色をメインで使用するので、穏やかな印象になります。シックやクラシカルな印象を作りやすい配色です。

カマイユ

色相とトーンをほんの少しだけ変えて、繊細なニュアンスを表現する配色。一見すると一色に見えるような微妙な色使いが特徴です。カマイユとはフランス語で「単色画法」という意味の言葉です。

フォカマイユ

カマイユよりもほんの少し色相やトーンの変化を強めた配色。フォカマイユとは、「にせもののカマイユ」という意味です。カマイユと同じく繊細な印象の演出効果が得られます。

ウォームシェード

赤みのある色でそろえる配色。色数が多くてもまとまり感を出しやすくなります。暖かい印象になります。

クールシェード

ウォームシェードとは逆に、青みを感じる色で統一した配色。色から冷たさを感じさせることができます。

ナチュラルハーモニー

自然界の光の色の法則に沿った配色。色相環の中で黄色に近い色は明るく、赤紫に近い色は暗くします。人間が本能的に慣れ親しんでいる配色方法なので、自然な印象を作ることができます。

コンプレックスハーモニー

ナチュラルハーモニーとは逆に、色相環で青紫に近い色を明るくし、黄色に近い色を暗くすることで、人工的な印象を演出する配色。自然を感じさせたい場合は逆効果ですが、使い方によっては斬新なカラーイメージを打ち出すこともできます。

配色を決める参考になる書籍

さいごに

色彩・混色・配色について知れば知るほど、表現やデザインの幅がひろがります。色彩について深く知っているのと知らないのとでは、色のコントロール力が大幅に違ってきます。

色を自由にコントロールできるようになると、よりいっそう自由に表現できるようになりますよ!