キャンバスの張り方 - 3つのプロセスから徹底解説
おもに油彩画の支持体として使われる「張りキャンバス」。その構造はフレームとなる木枠に画布を張り込んだシンプルなものです。作者の表現に合わせて画布の種類や画肌、張り具合を調整できるので、自分好みに合わせた張りキャンバスを作ることができます。
今回はそんな張りキャンバスの一般的な張り方をご紹介いたします。ぜひこの機会に貼り方をマスターして、キャンバス張りにチャレンジしてみてください。
もくじ
キャンバスの張り方(準備編)
①木枠
②画布(キャンバス)
③キャンバス張り器
④キャンバスタックス(釘)
⑤キャンバスハンマー・釘抜き
⑥その他
キャンバスの張り方(環境偏)
キャンバスの張り方(実践偏)
【手順①】木枠を組み立てる
【手順②】画布と木枠を組み合わせる
【手順③】画布にテンションをかけながらタックス(釘)でとめる
【手順④】仕上げ
まとめ
キャンバスの張り方(準備編)
キャンバスを張るために必要な道具類をそろえよう
①木枠
②画布(キャンバス)
③キャンバス張り器
④キャンバスタックス(釘)
⑤キャンバスハンマー・釘抜き
⑥その他
キャンバスの張り方(環境偏)
アトリエや作業場などで行うのが最適ですが、ご自宅で作業を行う場合は床や壁を保護しながら行うようにしましょう。打ち込んだタックスを下にした時に床を傷つけたり、大号数の木枠で壁や天井を破損させたり等は、よく聞く事例です。
また、細かいタックスを落として踏んでしまったりすることもありますので作業環境には注意をはらいましょう。
画布は天然の素材の為、温湿度により張り具合が異なります。特に画布に使われる麻地は湿度により伸縮する性質のため、張るときの環境は適度に湿度のある場所や雨の日などが最も適しています。
高い湿度で緩んだ状態の画布を木枠に張り込むと湿度が低くなった時に張りが「ピン」となり高いテンションが生まれます。逆に乾燥した状態で張り込むと湿度が上がった時に画布が緩んでしまう恐れがあります。
木枠にもいえる事ですが、急激な温湿度の変化は反りやねじれの原因となりますので注意が必要です。
キャンバスの張り方(実践偏)
準備と環境がととのったら、実際にキャンバスを張ってみましょう。
【手順①】木枠を組み立てる
木枠は四角形を形成する4本の親木と補強材としての桟木で構成されています。桟木はサイズにより本数が異なり、大号数には複数、小号数には入っていません。
木枠の中央部を強くたたき過ぎると木枠が割れる場合がありますので注意しましょう。※中桟木がある場合は桟木に長手の親木を差し込み、短手の親木を仮組みします。
<ポイント>
★木枠をたたくときは常に真上から打ちましょう。斜めから打ち込むとホゾや木枠本体の破損につながります。
【手順②】画布と木枠を組み合わせる
画布を裏返し、組み上げた木枠を画布の裏にあて位置を調整します。このとき木枠の表裏を間違えないように注意してください。(傾斜角がついているほうを画布裏面に当てます)
●画布の余白が均等になるように木枠を中央にセットします。
画布は木枠のサイズより一回り大きいものを用意します。目安は木枠のサイズ+厚み+2~3cm(一辺)ほどです。
例)F10号(530x455mm)木枠厚み20mmの場合の画布サイズ目安
長手 約630mm(530+20+20+30+30mm)
短手 約555mm(455+20+20+30+30mm)
木枠の表裏に注意
<ポイント>
★画布の余白が小さすぎると張り器で挟みづらく、適切なテンションをつけられません。カットする場合は、木枠厚と挟み代に気をつけましょう。
【手順③】画布にテンションをかけながらタックス(釘)でとめる
③-3 続いて2本目はもう一方の長辺の中央部へ、今度は張り器でキャンバスを挟み込み引っ張りながら仮打ちします。
同様に短辺の中央部へキャンバスを引っ張りながら仮打ちし、4点(①~④)を固定します。
なお、基本的にキャンバスを引っ張る力具合は全て均一にするとシワがよりづらくなります。
4点を仮打ちするとキャンバス表面中央にひし形のシワ模様が出ます。※シワは伸びにくければ更に四隅を仮打ちします。(⑤~⑧)
<ポイント>
★仮打のタックスは、木枠の中央からやや奥側(表面寄り)に打ち込むと本打ちするときの引きで画布穴が手前にずれ、木枠の中心に打つことができます。
★号数が大きいときは四辺中心のみタックスを2本で固定すると、画布破れの防止になります。
【手順④】仕上げ
<ポイント>
★角の折込部は画布が二重になるので、打ち込んだタックスが抜けやすそうな場合はもう1本打ち込みましょう。
★最初は表面のシワを確認しながら、タックスを打ち込みましょう。打ったタックスより内側(中央側)にシワが拠っている場合は一度、タックスを抜き、再度、張りを調整しながら打ち直します。
まとめ
最初はなかなかきれいに張りあげるのは難しいかもしれません。張り器の引っ張り具合やタックスの打つ間隔などで簡単にシワがよってしまうからです。しかし、何度も練習を重ね、慣れることで仮打ちもせず、シワのないピンとした張りキャンバスが張れるようになれます。テンションの高いキャンバスをはじいた時の音を聞けば、制作意欲もきっと高まりますよ!