「金継ぎ」の基本的なやり方とは?初心者におすすめのキットもご紹介!

皆さんは「金継ぎ」をご存じですか?ここ数年、個人の作家やギャラリーが主催するワークショップなどが増え、SNSでも話題になっていたことから写真を目にしたことがある方は多いかもしれません。
こちらの記事では、「金継ぎ」の基本的なやり方と、初心者でも気軽に本格的な金継ぎに挑戦できるキットをご紹介。ずっと気になっていたけれど、ワークショップに参加する余裕はない…という方も、おうち時間にひとりでできちゃいます!

・「金継ぎ」とは?
・金継ぎをやるうえで注意すべきこと
・初心者におすすめの金継ぎキット「つぐつぐ」
・金継ぎに必要な道具・材料
・器のさまざまな破損状態
・金継ぎの基本的なやり方



「金継ぎ」とは?

陶磁器の割れや欠けを漆によって接着し、その上を金粉で装飾して仕上げる伝統的な修復技法です。
その歴史は、蒔絵などの漆を使う工芸技術と、修理した器のありのままを受け入れる茶の湯文化が花開いた室町時代までさかのぼるそう。





金継ぎをやるうえで注意すべきこと

生漆の原料「ウルシオール」は肌をかぶれさせる場合があるため、金継ぎの作業中は常にゴム手袋をつけ、長袖の洋服を着て髪はまとめるようにしましょう。
皮膚に付着した時は油(菜種油・キャノーラ油、なければサラダ油)でその部分をすぐに拭き取ってから、石鹸でよく洗い流してください。かぶれてしまった時は使用を中止して、医師にご相談ください。



初心者におすすめの金継ぎキット「つぐつぐ」

金継ぎは「生漆(きうるし)」をはじめ、「砥粉(とのこ)」や「弁柄粉(べんがらこ)」など専門的でこまごまとした用具が必要なため、個人で材料をそろえるのはなかなか大変。

金継ぎ専門店「つぐつぐ」のキットは、本格的な金継ぎに必要な道具の適量がコンパクトに収まっていて、初心者にとってもおすすめ◎また金箔だけでなく、金箔と銀箔の両方が入った「金継ぎ・銀継ぎ」のできるセットも!



金継ぎに必要な道具・材料

「つぐキット」には金継ぎに必要不可欠な道具がすべてそろっていますが、日用品やクリーニング用の道具、文房具など各自で用意しなければならないものもあります。



器のさまざまな破損状態

うつわの破損状態によって、金継ぎの手順は異なります。

割れ麦漆(むぎうるし)で接着を行い、大きい欠けがある場合は刻芋(こくそ)で埋め作業をしてから、錆漆(さびうるし)で小さい凹凸を埋め、仕上げます。
1cm以上の欠け刻芋で埋め作業をしてから、錆漆で小さい凹凸を埋め、仕上げます。
1cm未満の欠け錆漆で小さい欠けを埋め、仕上げます。
ヒビヒビの修復は簡単なようでもっとも難しいため、力を入れて割れそうなものは割ってしまいましょう。割ることのできない浅いヒビ・短いヒビは、両面から生漆を塗って染み込ませてから、錆漆で小さい凹凸を埋め、仕上げます。



金継ぎの基本的なやり方

金継ぎは、主に6つのステップからなります。(今回は「割れ」と「欠け」の継ぎ作業をご紹介しています。)

1. 割れ・欠けの前処理サンドペーパーで器の割れ面の角や釉薬が残っている部分をやすり、少し面取りします。
2. 割れの接着小麦粉を水で練ったものと生漆を混ぜ合わせた割れの接着剤「麦漆(むぎうるし)」で割れの接着を行い、湿度と温度を保った「漆風呂(うるしぶろ)」で1週間ほど固めます。
3. 欠けの充填 麦漆・砥粉(とのこ)・木粉(きこ)を練り合わせた「刻芋(こくそ)」 を器にのせて欠けの充填を行い、「漆風呂」で1日ほど固めます。
4. 小さい穴埋め砥粉と生漆を混ぜた「錆漆(さびうるし)」を割れ・欠けの接着面に薄く塗り、平らに仕上げます。
5. 水研ぎ・下地塗り耐水ペーパーに軟度も水をつけながら、その角で錆漆を塗った表面を平らで滑らかに「水研ぎ」します。その上に、黒粉と生漆を混ぜた「黒色漆」を薄く塗ります。
6. 仕上げ黒色漆を塗った表面を水研ぎしてから、その上に弁柄粉と生漆を混ぜた「弁柄漆(べんがらうるし)」をかすれるほど薄く塗ります。そのあとに金粉を蒔いて完成!
[ 番外編 ] 道具のお手入れ方法

!)割れと欠けの両方がある場合は、割れの接着を先に行いましょう。


1. 割れ・欠けの前処理

1)サンドペーパーで器の割れ面の角のみをやすり、少し面取りをします。

[ Point ] あまり神経質にならず、接着後に錆漆(さびうるし)が少し入る程度の溝ができれば大丈夫◎ 角度は割れ面の角に対して45°くらいで。

面取りには、サンドペーパーの代わりに別売りのダイヤモンドやすりもオススメ。



2. 割れの接着

1)割れを接着するための「麦漆(むぎうるし)」をつくります。パレットにさじで小麦粉を出します。耳たぶくらいの固さになる様に、スポイトで水を一滴ずつ加えてへらで練り混ぜます。

[ Point ] 通常の器の割れ・小さい欠けであれば、小麦粉はさじ一杯でOK!



2)1と同量より少し多い体積の生漆を加えてへらで混ぜ、チューイングガムの様に伸びるくらいの固さに練ります。

[ Point ] 麦漆をへらで上に伸ばして長い糸を引かなければ、生漆を足してさらに混ぜます。


麦漆は、空気に触れないようにラップで密封して冷蔵庫で約1週間保存できます。

シミがつきやすい作業なので、必要であれば器をマスキングします。

3)竹べらを使い、麦漆を割れた断面の両方に薄くまんべんなく塗り、接着します。

[ Point ] 破片同士を合わせた時に、麦漆が少しだけ割れ目からはみ出るくらいが適量!
[ Point ] 麦漆に触れないよう気を付け、竹べらやカッターなどで接着面に段差がないか確認しましょう。



4)絶対にズレないように、マスキングテープで両面を固定します。



5)漆風呂に入れて1週間以上放置します。


漆風呂のつくりかた


漆が固まるには温度約20~30℃、かつ湿度約70~85%が適しています。箱の中にビニール袋を敷き、その上に濡れ雑巾を置いて、蓋をして湿度を保ち、暖かい場所に置きます。とても乾燥する冬などは箱をビニール袋で覆うと、湿度を高く保つことができます。湿度の上がりすぎを防止するため、袋は密封せず、一部を開けておいてください。

[ Point ] 時間が経つと重力でズレやすいので、重力に沿った垂直の角度で器を保管するのがベター。また濡れ雑巾が継ぎ部分に触れないよう、注意しましょう。



4)完全に固まったら、マスキングテープを外して、はみ出た麦漆をカッターで削り落とします。





3. 欠けの充填

1)欠けを埋めるための「刻芋(こくそ)」をつくります。麦漆:木粉:砥粉=1:1:1くらいの体積をさじでパレットに出し、へらで練り混ぜます。

[ Point ] 固い粘土のようになるまで粉を加えましょう。




2)竹へらを使い、刻芋で欠けを一度に最大0.5~1mm厚くらい乗せて埋めていきます。少しずつ埋めないと固まるのにすごく時間がかかります。

[ Point ] 竹へらの先に刻芋がついていると付けにくくなるため、何度もティッシュオフしながらきれいな状態で使用しましょう。ラップを壁にしたり、ラップの上から刻芋をつまむときれいに埋めやすいです。



3)漆風呂に入れて1日以上放置します。

4)固まったら、はみ出た余分な刻芋をカッターで削り落とします。欠けが完全に埋まるまで2~4の作業を繰り返します。



5)2cm角程度にサンドペーパーを切り取り、三つ折りにして、欠けの面がまっ平になるまで根気よく研ぎます。

[ Point ] サンドペーパーは器に傷をつけるので刻芋の上だけを研ぐようにしましょう。力を加えすぎると刻芋が取れてしまう可能性があるので、慎重に研ぎましょう。





4. 小さい穴埋め

1)小さな凹凸を埋めるための「錆漆(さびうるし)」をつくります。パレットにさじで砥粉を出し、マヨネーズくらいの硬さになるまでスポイトで水を一滴ずつ加えてはへらでよく練り混ぜます。



2)1の6割くらいの体積の生漆をパレットに出し、へらでよく練り混ぜます。

[ Point ] 錆漆はすぐに茶色く変色し硬くなってしまうので、手早く作業しましょう。



3)錆漆を竹へらか筆を使い、割れ・欠けの上に薄く塗り、平らに仕上げます。

[ Point ] 筆を使用する場合、筆についている油をパレットに出したエタノールで洗い、ティッシュでよく拭き取ってから錆漆を塗りましょう。また錆漆のついた筆先は固まりやすいので、使用後はすぐにお手入れしましょう。



4)漆風呂に入れて1日以上放置します。



5. 水研ぎ・下地塗り

1)耐水ペーパーを2cm角くらいに切り取り、三つ折りにし、何度も水につけながら錆漆を塗った表面が平らでなめらかになるように研ぎます。研いだあとの器に残った余分な水はティッシュで拭き取ります。

[ Point ] 耐水ペーパーは器に傷をつけるので、なるべく錆漆の上だけを研ぐようにすると◎ またこの水研ぎでの表面の滑らかさが最後の仕上がりに影響してくるので、時間はかかりますが根気よく研ぎましょう。



2)錆漆の上に塗る下地「黒色漆(こくしょくうるし)」をつくります。パレットに生漆を少し多めに出し、水分が蒸発して量が減り黒くなるまで、生漆をへらでよく混ぜます。



3)2のよく混ぜた生漆と、同量よりすこし少ない量の黒紛をさじで加え、へらでよく混ぜます。



4)筆についている油分をパレットに出したエタノールで洗い、ティッシュでよく拭き取ります。


5)黒色漆を筆で錆漆の上に薄く塗ります。

[ Point ] 厚く塗ると黒色漆が縮んでシワができてしまうので、薄く塗りましょう。



6)漆風呂に入れて1日以上放置します。



6. 仕上げ

1)耐水ペーパーを2cm角くらいに切り取り、三つ折りにし、何度も水につけながら黒色漆を塗った表面が平らでなめらかになるように研ぎます。研いだあとの器に残った余分な水はティッシュで拭き取ります。

[ Point ] 錆漆のときと同じく、この水研ぎでの表面の滑らかさが最後の仕上がりに影響してくるので、時間はかかりますが根気よく研ぎましょう。



2)黒色漆の上に塗る金粉の下地「弁柄漆(べんがらうるし)」をつくります。パレットに生漆をすこし多めに出し、水分が蒸発して量が減り黒くなるまで、生漆をへらでよく混ぜます。



3)2のよく混ぜた生漆と同量よりすこし少ない量の弁柄粉をさじで加え、へらでよく混ぜます。



4)筆についている油をパレットに出したエタノールで洗い、ティッシュでよく拭き取ります。

5)筆で弁柄漆を、黒色漆を研いだ上にかすれる手前くらいすごく薄く塗ります。



6)15~30分ほど置いたあと、弁柄漆の上に金粉を蒔きます。

[ Point ] このとき金粉の代わりに銀粉を蒔いたり、金属粉を使用せずにお好みに合わせて黒色漆や弁柄漆のみで仕上げるのもアリ!

7)金粉の包み紙を開けます。真綿は羽毛が表に出ないように丸めて持ち、真綿の先にたっぷりと金粉をつけます。



8)弁柄漆を塗った横から、掃きかけるように金粉をのせていきます。真綿の金粉がついている面だけで、そうっと触れるようにしましょう。

[ Point ] 力が強すぎたり、金粉がついていない真綿の面で漆に触れてしまうと、漆が真綿について伸びてしまうことがあるので注意!!
[ Point ] 器を金粉の包み紙の真上に持ち、余分な金粉が元の紙の上に落ちるようにすると、金粉を無駄にしにくいです。



9)金粉が隙間なくのったら、真綿で金粉の上をやさしくクルクルと磨きます。

10)器に付着した余分な金粉をもとの包み紙に戻します。



12)漆風呂に入れて1日以上放置し、完全に固まったらできあがり!





[ 番外編 ] 道具のお手入れ方法

パレット・へら


パレットに油を出し、へらでこすって汚れを落とし、ティッシュでよく拭き取ります。
油できれいにした後のべたつきが気になる場合は、エタノールを含ませたティッシュでよく拭き取るか、中性洗剤と水で洗い流してください。



竹へら


汚れをティッシュで拭き取ります。こびりついた汚れはサンドペーパーで研いで落とします。

[ Point ] サンドペーパーで竹へらを使いやすい形に仕立てることも可能!




パレットに出した油で筆をよく洗い、きれいな油を筆にたっぷり含ませたままキャップをして、保管します。

[ Point ] 漆は油分で固まりにくくなるため、次に筆を使用するときはパレットにエタノールを出し、必ず油がついた筆先を洗い、ティッシュでよく拭き取ってから使用しましょう。