アクリル絵具入門

アクリル絵具とは

絵具は、大まかに言うと「色の粉(顔料)」と「糊(のり)」と「水」で出来ています。
中でも絵具の種類を大きく分けるのは「糊」の違いです。
水彩絵具やポスターカラーの糊はアラビアガムという植物の樹液を使用しており、乾燥後も水で溶けます。
一方、アクリル樹脂を使用した絵具は、一度乾くと耐水性になり強い接着力をもちます。

アクリル絵具の特徴

1.重ねても色が濁らない

アクリル絵具は水で溶きますが、一度乾くと水に溶けないため、色を重ねても下の色と混ざって濁る事がありません。
また、失敗しても色を濁す事なく上から重ね塗りが出来るので、修正がしやすいというメリットがあります。

2.様々な素材に描ける

アクリル樹脂は強い接着力がある為、様々な素材に描く事が可能です。木、石、素焼き、コルクの他、専用の下地剤を使えば金属やガラスにも描画出来ます。
※ブリキの作例にはメタルプライマーが使用されています。

作例 ブリキに塗布(メタルプライマー使用)
作例 素焼きの陶器に塗布
作例 コルクに塗布

二種類のアクリル絵具(透明タイプと不透明タイプ)を重ね塗りで比較

アクリル絵具には大きく分けて2種類あります。
「透明/ツヤ有りタイプ」と「不透明/ツヤ無しタイプ」の2種です。
この違いは作品の質に大きく影響しますので、ご自身の描きたい絵はどちらが適しているのかをよく考えて選ぶ事が重要です。
ここでは、ターナー色彩の「U-35(透明タイプ)」と「アクリルガッシュ(不透明タイプ)」を例にその違いと魅力をご説明します。
※あくまで絵具の基本性質からくる典型的な傾向であり、水で薄めたりメディウムを混ぜたりした場合はこの限りではありません。ご了承ください。

アクリルガッシュ(不透明タイプ)

作例 アクリルガッシュ使用

アクリルガッシュは不透明タイプの為、重ねて塗ると下地の色を覆い隠します。色紙を重ねた様なフラットで明快な仕上がりに注目してください。

U-35(透明タイプ)

作例 U-35使用

「U-35」は透明タイプの為、色を重ねた時、下の色が透けながら重なっていきます。クロスした部分が、色セロファンを重ねた様に影響を及ぼしている様子に注目してください。

それぞれのアクリル絵具を作品に使ってみよう

アクリル絵具の基本性質が、作品にどの様な影響を及ぼすかをみていきましょう。

抽象的な作品の場合

・アクリルガッシュ

作例 アクリルガッシュ使用

アクリルガッシュによる、ムラの無い不透明性を活かしたフラットで明快な作例。
色目のはっきりした色彩構成やデザイン画に適しています。

・U-35

作例 U-35使用

U-35の透明性を生かした作例。下に塗った色と上に塗った色の響き合いが生まれています。

・U-35は絵具の盛り上げもできます

作例 U-35使用

U-35は、盛り上げができるアクリル絵具です。
ペインティングナイフなどを使って、厚みのある描画が可能です。
アクリルガッシュは色の粉(顔料)が多い分、糊が少ないので盛り上げ技法には向いていません。

風景画の場合

・アクリルガッシュ

作例 アクリルガッシュ使用

塗った色が下の色を隠して重なっていく事から、明快なイラスト画、アニメ背景画的に仕上がる傾向があります。

・U-35

作例 U-35・グレージングメディウム使用

塗った色が下の色の影響を受けながら重なっていく為、序々に色が変化する油絵的な作風に向いています。左側の最下層のオレンジ色が、重ね塗りの最終段階まで影響を及ぼしている事に注目してください。
※夕空のグラデーションにはグレージングメディウムを使用しています。

人物画の場合

・アクリルガッシュ

作例 アクリルガッシュ使用

アクリルガッシュはフラットな色面や線描に向いているので、イラスト、日本画、浮世絵、コミック、アニメーションのような画風に適しています。

・U-35

作例 U-35使用

U-35は下に塗った色が透けながら重なっていく事から、油絵風の微妙な色の変化がある画風に適しています。
重ね塗りの最下層のブルーが、最上層まで影響を及ぼしている事に注目してください。
鉛筆の線を生かした水彩画的表現にも適しています。

アクリル絵具を水彩風に使ってみよう

アクリル絵具を水で薄く溶き、水彩のように使うことで色セロファンを重ねた様な美しい表現が可能です。

作例 U-35使用

アクリル絵具は、乾燥後なら重ねて塗っても色が濁りません。
この性質は絵具を薄く溶いても失われないので、各色の発色が損なわれません。
その反面、乾燥後は水に溶けない為、水彩絵具の様に乾燥後ににじませたりぼかしたりすることが出来ないというデメリットもあります。

アクリル絵具でいろいろな絵にチャレンジ!

アクリル絵具の基本性質とその効果を、「アクリルガッシュ」と「U-35」を使ってご紹介しました。
ターナーのアクリル絵具で様々な技法にチャレンジしてみましょう。